4・25文科省要請書
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2008年4月25日
文部科学大臣 渡海 紀三朗 殿
私たちは沖縄戦記述に対する検定意見の撤回をあくまでも要求し
不当な検定意見を生み出した検定制度の抜本的改革を求めます
沖縄戦検定意見の撤回を求める4.24全国集会実行委員会
連絡先 大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
連絡先 大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
昨年12月27日、沖縄戦記述に関する訂正申請の結果公表後、文科省が検定意見を撤回せず、軍の強制の記述を認めなかったことに対し、沖縄をはじめ全国の多数の団体から強い抗議ととともに検定意見撤回、記述回復の要求が文科省に提出されました。しかしいまだ文科省はこれらの要求にまったく応えていません。よってここに、沖縄戦検定意見の撤回を求める4.24全国集会参加者一同を代表し、あらためて要請を行うものです。
私たちは、沖縄戦での「集団自決」=強制集団死の教科書記述から「日本軍の強制」を削除させた文科省の検定意見を絶対に許すことはできません。親が子を、子が親を、兄が弟妹を殺しあわなければならなかった悲劇を、住民の自発的意思によって行われた美しい死だなどと偽ることは絶対に許すことができません。この悲劇が日本軍の命令・強制なしにはおこり得なかったということは、語ることさえできないほどの苦しい体験をくぐりぬけた人々の身体にきざみこまれ、その証言を通じて明らかになった歴史の真実です。だからこそ昨年9月の検定意見撤回を求める県民大会に11万余の人々が集まったのです。
文科省は沖縄県民の怒りに驚き、全国にひろがる検定意見撤回の声に押されて、教科書の再訂正の申請を認めましたが、2007年末に出された結果は、根拠のない誤った検定意見をあくまでも撤回せず、日本軍の強制という記述は認めないというものでした。
しかし3月28日に出された大江・岩波沖縄戦裁判の大阪地裁判決は、この裁判で自決命令は出していないと主張し検定意見の根拠とされた梅沢裕元隊長の陳述の信用性をほぼ全面的に否定しました。さらに、体験者の証言が具体性・迫真性を有することを認め、自決命令を発したこともあり得るとしたうえで、軍が「集団自決」に「深く関わった」ことを認めました。文科省が示した検定意見の主要な根拠が裁判所によっても否定されたことになります。文科省はこのことを重くうけとめ、2006年度の沖縄戦記述に対する検定意見をただちに撤回し、「集団自決」について日本軍の強制を示す記述を回復させるべきです。
ところが文科省および検定審議会は、ここにいたってなお誤った検定意見に固執して誤りのさらなる上塗りを重ねています。沖縄県民の願いをふみにじり、歴史の真実を歪曲しつづけている文科省および検定審議会に対し、私たちは、強い怒りをこめて抗議します。
このような不当な検定意見がいつまでも撤回されずに生き続けることを許すならば、すべての小中高校の教科書からあらゆる面で歴史の真実が消されることになります。戦争の真実が歪められるとき、ふたたび戦争の悲劇を繰り返すことになりかねません。
また、そもそもこのような不当な検定意見がまかりとおるようになったのは、検定制度にも根本的な原因があります。新学習指導要領が教育への統制をいっそう強化しようとしている今、検定制度がこのまま維持されるならば、真実を歪める誤った検定意見がさらに幅をきかせることになるでしょう。誤った検定の根を絶つためには検定制度の抜本的改革がどうしても必要です。
よって私たちは、次のことを要求します。
(1)沖縄県民大会実行委員会が昨年末にあらためて決議したように、沖縄戦記述に対する2006年度の検定意見をただちに撤回し、「集団自決」に軍の強制という記述を復活させること。
(2)教科書検定制度を以下のように抜本的に改革し、検定制度を段階的に廃止すること。
ア、不透明な形で任用されている教科書調査官が検定を主導するのをやめさせ、近い将来に教科書調査官制度を廃止すること。
イ、検定審議会を文科省から独立した機関とし、委員の人選を透明化・公正化すること。
ウ、検定過程の情報を文書化し公開性を高め、市民監視のもとで検定が行われるようにすること。
エ、検定意見の強制力を緩和し、執筆者の見解が尊重されるようにすること。