教科書検定制度の抜本的な改革を求める要請
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2008年4月25日
文部科学大臣 渡海 紀三朗 殿
教科書検定制度の抜本的な改革を求める要請
子どもと教科書全国ネット21
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
連絡先:子どもと教科書全国ネット21
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-6-1小宮山ビル201
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2007年3月30日の文部科学省による2006年度高校教科書の検定公開以降、私たちは、沖縄戦における強制集団死(「集団自決」)記述から「日本軍の強制」を削除した検定意見は、間違ったものであり撤回すべきだとくり返し指摘し、貴職に要請してきました。この検定意見は、その後のマスコミの取材で教科書調査官が恣意的につけたものだということが明らかになりました。さらに、2008年3月28日の大阪地方裁判所の「大江・岩波沖縄戦裁判」判決によって、原告・梅澤裕元座間味島戦隊長の陳述書と供述が「信用性に疑問がある」とされ、文科省の検定意見の根拠が失われました。このことによって、検定意見の間違いはますます明らかになりました。
文科省(文部省)の検定意見に間違いや違法性があったことは、これまでもしばしば指摘され、家永教科書裁判最高裁判決でも確定しています。私たちは、こうした間違いや違法な検定が行われてきたのは、検定制度そのものに重大な問題点があるためだと考えます。
貴職は2007年12月26日の談話で、検定制度改善について、今年夏までをめどに検定審議会で検討することに言及され、教科用図書検定調査審議会(教科書検定審議会)は、2008年2月28日の総会で、検定制度の透明化について改善策を検討することを決めなした。しかし、私たちは、検定制度の問題点は「透明化」だけではなく、抜本的な改革が早急に必要だと考えます。
私たちは、日本の教科書検定制度は、先進国では例をみない遅れた制度であり、できるだけはやく廃止すべきだと思います。しかし、60年以上続いてきた制度であり、すぐに廃止することは困難がともないます。そこで、当面、検定制度をつづけるのであれば、次のような制度の改革を実行する必要があると考え、下記のことを要請いたします。
記
当面の教科書検定制度改革についての要求
Ⅰ.教科用図書検定調査審議会(検定審議会)・教科書調査官に関すること
1)教科書調査官の権限は、検定申請された教科書を調査し、それについて検定審議会に報告するだけにとどめること。
2)検定意見の決定は、検定審議会が行うこと。
3)教科書検定を行う機関(検定審議会)は、政府・文部科学省から独立した機関にすること。
4)教科書調査官及び検定審議会委員の人選については、学会の推薦を義務づけるなど透明化、公正化すること。
5)教科書調査官は近い将来廃止し、検定申請図書の調査は、1956年までのように非常勤の現場教員や研究者が行うようにすること。
Ⅱ.検定手続き(検定規則・検定基準・検定規則実施細則)などに関すること
1)検定意見は、「誤解するおそれがある」などの抽象的な文書ではなく、従来口頭で伝達されていた部分も含め、それを読めば意見の内容がわかるように完全に文章化すること。
2)検定規則や実施細則にないのに、文科省が勝手に決めている検定意見伝達の時間制限(現在は2時間)を撤廃し、執筆者・出版社が納得がいくように質問し説明を受けられるように、十分に時間を保証すること。
3)検定により記述内容の修正を求める検定意見を付けるさいは、その学問的根拠を文書によって示すこと。
4)検定の合格・不合格の決定に至る過程を、執筆者の見解がより尊重される方向で改善すること。
5)検定意見の強制力を緩和すること。例えば、仮に検定意見に学問的根拠があり、執筆者の原稿にも学問的根拠がある場合には、文科省は検定意見に固執しないことなど。
6)検定規則第9条で20日以内に検定意見に対する「意見申立て」ができるが、この意見申立てについては、実際に機能する制度にすること。例えば、修正表提出期限が35日なので、意見申立てから文科省の回答までの日数は修正表提出期限の35日から除外すること。また、現行制度では、意見申立てを検定意見を付けた同じ検定審議会が行っているが、これを改善するなど。
7)検定決定後に検定意見の誤りが明らかになった時に、検定意見撤回についての条項を検定規則に設けること。
8)検定基準に沖縄条項を設け、それに対応して検定審議会委員に沖縄近現代史の専門家を任命すること。
9)現行検定規則では、2000年まで明記されていた「文部大臣は、…検定審議会に諮問し、その答申にもとづいて」合否を決定するという規定がなく、文部科学大臣が勝手に検定を行う規定になっている。検定規則上に審議会の役割を明記すること。
10)学習指導要領は大綱的基準であるので、教科書作成の参考基準にとどめること。そのために、学習指導要領の「内容の取扱い」を検定基準から削除し、「『学習指導要領に示す内容の取扱い』に示す事項を不足なく取り上げていること」という規定を削除すること。
Ⅲ.検定の公開に関すること
1)検定申請図書(白表紙本)を申請時から公開し、広く意見を聞いて検定に反映させるようにすること。
2)検定審議会の審議(経過や関係資料など)については、部会・小委員会も含めてすべて公開すること。
3)検定中であっても検定意見など検定に関する資料を公開するか、又は出版社が公開することを妨げないこと。
Ⅳ.将来的な改革に向けて
1)検定制度を段階的に廃止すること。例えば、高校教科書の検定の廃止、又は特定の教科の検定の廃止するなど。